光る酵素を生かしさまざまな物質を検出―紙でできた免疫検査デバイス

2025年3月14日 公開

牛乳や血液など不透明な検査サンプルもその場で測れる、持ち運び可能なデバイス開発に成功

どんな研究?

体内に侵入したウイルス、細菌、花粉などの異物を見つけて排除する免疫タンパク質を抗体とよびます。抗体が異物と結びつく働きを使うと、特定の物質を見つけたり、その量を調べたりすることが可能です。抗体のこのような働きを利用した手法は「免疫測定法」として確立されています。

免疫測定法は、ほんの少しの物質でも正確に検出することができるのが利点です。そのため、病気の診断や食品の安全管理などで重要な役割を果たしています。

eyecatch of the research achievement

一方、近年では医療現場において患者さんの病気を即座に診断して治療方針を決める重要性が高まっています。現場のさまざまな状況下でも「安定的な精度」で「簡便」に「素早く」物質を検出できる方法が求められています。

この課題解決のために、総合研究院の北口哲也准教授らは、検査サンプルを混ぜるだけで発光色が青から赤に変わる「生物発光免疫センサBRET nano Q-body」の開発に成功しました。

スマートフォンのカメラで撮影した免疫センサの紙デバイスの発光色の変化

ここが重要

生物発光免疫センサBRET nano Q-bodyは、ホタルなどの生物が光を放つ際に使用している酵素を巧みに応用しました。今回利用した発光酵素は、ホタル由来のものと比べても100倍以上明るい、深海エビ由来のものであり、目視での確認が非常に便利になりました。また、物質を見つけるのにラクダ科動物に由来する安定性の高い抗体を利用しました。そして、免疫センサを凍結乾燥し、紙デバイスに加工する工夫を加えることで、簡単に持ち運び、どこででも手軽に分析することが可能になりました。

今後の展望

開発した免疫センサは、さまざまな応用が可能で、理論的にはあらゆる物質を検出することができます。今後は、臨床サンプル、環境試料、食品分析など、実用的な分野での活躍を目指します。

研究者のひとこと

開発した紙デバイスは、温度管理なしで長期間の保管ができ、患者さんのすぐ近くで、屋外、自宅にかかわらずどこでも検査することが可能になります。病院での診断や治療、自宅での感染症の拡散を防止の判断に役立つことはもちろんのこと、環境分野での応用としても「その場で検出」する技術に変革をもたらすことができると確信しています。

北口准教授(最後列左)と北口哲也研究室メンバ

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