どんな研究?
セラミックスは、食器やタイルだけでなく、スマートフォンや電気自動車などに使われる電子部品にも欠かせない材料です。たとえば、電気を蓄えるコンデンサにも使われています。セラミックスは原料の配合を少し変えるだけで性質が変わるため、より優れた材料を見つけるには、多くの組み合わせを試す必要があります。
ところが、従来の材料探索には大きな壁がありました。材料を1種類作るたびに、原料の粉末を量り、よく混ぜ、押し固めてから高温で焼く必要があったのです。配合を変えるたびに同じ準備を繰り返すため、焼く前の手作業だけでも1種類につき1~2時間ほどかかっていました。また、ロボットを使った自動化をしようとしても、高価な設備や大量の原料を調達することが必要でした。
東京科学大学(Science Tokyo)の安原颯(やすはら・そう)助教らの研究チームは、この時間のかかる作業そのものを変えられないかと考えました。着目したのは、植物の細胞壁に含まれるセルロースを非常に細くほぐしたセルロースナノファイバー(CNF)です。
ここが重要
研究チームは、セルロースナノファイバー(CNF)を含む水にセラミックスの原料粉末を混ぜ、あらかじめ液状にしておく方法を開発しました。配合を変えたいときは、この液体を必要な割合で混ぜて乾かすだけで、焼く前の形にまとめられます。CNFには粉末を均一に散らばらせ、まとまりを保つ働きがあるため、粉を一から量って混ぜたり、型に入れて強く押し固めたりする工程を省けます。
これにより、1種類の配合を準備する手作業は1~2時間から約3分に短縮されました。乾燥や焼成には別途時間が必要ですが、従来の方法と同程度の性質を持つセラミックスが得られます。CNFは高温で焼くと分解してなくなり、完成した材料の性能を妨げないことも確かめられました。
この方法で実際に多くの配合を調べたところ、コンデンサに広く使われるチタン酸バリウムをもとにした、新しい組成のセラミックスが見つかりました。電気を蓄える性能が高く、温度が変わってもその性能が大きく変わらないことが特徴です。材料の作り方を工夫することで、新たな材料の発見につながりました。
今後の展望
今回見つかったセラミックスは、温度が変わっても性能が安定するコンデンサの開発に役立つ可能性があります。一方、セルロースナノファイバーを使った試料づくりの方法にも、大きな可能性があります。安価な装置と少量の原料で多くの配合を試せるため、これまで時間や費用の制約で十分に調べられなかった材料の組み合わせにも挑戦できます。この方法をさまざまなセラミックスに広げることで、新たな材料の発見がさらに進むと期待されます。
研究者のひとこと
思いついたアイデアをすぐに検証できる点こそが、私が材料を対象として研究を行う一番の理由です。材料が発現する特性はその組成によって劇的に変化するため、「これをこう変えたら、物性はどうなるのだろう?」という疑問が尽きません。「こうすれば調べられる!」というアイデアを、より簡単に、より高速に実行できるようにしたことが今回の成果です。手間や効率の観点から実行できていなかったアイデアに挑戦できるようになったので、これまで見つけられなかった材料の新たな可能性を探りたいと考えております。
(安原颯:東京科学大学 物質理工学院 材料系 助教)
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