どんな研究?
世界中でクリーンエネルギー開発が加速しています。クリーンエネルギーとは、環境への負荷を最小限に抑えたエネルギーのことです。クリーンエネルギーには、太陽光や風力などがあげられますが、水素もクリーンエネルギーのひとつです。なぜなら、水素は燃焼しても水しか排出しないからです。しかし、水素は可燃性で危険です。それにもかかわらず無色・無臭であるため取り扱いには注意が必要です。安全に水素を利用するためには、水素漏れを検知する水素ガスセンサが必須であり、そのセンサには、より高感度、高機能化が求められています。
今回、総合研究院フロンティア材料研究所の真島豊教授らの研究チームは、半導体式ガスセンサをベースにナノサイズの微細加工技術を使い、超微量の水素ガスを検出できるセンサの開発に取り組みました。
真島教授らは、これまでの研究で微細加工技術を駆使し、33ナノメートル(1 mmの3万分の1)の隙間を開けて白金を配置し、電極として使用する技術を確立してきました。今回の研究では、超高感度な水素ガスセンサを作成するために、そこに橋をかけるように銅ナノワイヤを設置し、高温での酸化処理によりナノワイヤに超微細な穴を開けました。水素が存在する場では、ワイヤーに流れる電流値が変化をするため、水素検出器として活用することが可能です。
ここが重要
開発したセンサは2億分の1(5 ppb)という超低濃度の水素を検出できることが分かりました。これは、既存の装置の検出感度をはるかに上回る性能です。わずかな水素ガスでさえ検出することができる点で極めて有用であり、水素を扱う産業の安全性を大きく向上させることに貢献する成果です。
今後の展望
今回開発したナノサイズの微小加工技術を応用すると、水素に限らず、さまざまなガスセンサの高速化・高機能化が可能になります。今後、企業などと連携して、実用化に向けた研究開発を加速させることが望まれます。
研究者のひとこと
私の研究室では、ナノテクのデパートと呼べるような、ガスセンサ、トランジスタ、ナノポアシーケンサなどのさまざまなナノスケールの素子を研究開発しています。次世代における有効なエネルギーのひとつとして水素は既に注目されていますが、有効活用するためには安全性の確保が課題でした。
本結果は、ナノスケール化することにより超高感度で信頼性の高い水素ガスセンサを実現しました。ナノスケールガスセンサは、ガスセンサ材料の秘められた機能を最大化することができるため、産業用途への幅広い応用につながる技術です。
これらを通して、水素社会の実現と、生活の質(QOL)の向上に貢献していきたいです。
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